ブログ無段
バカまっしぐらなダメ人間の古川土竜が、トチ狂った妄想を膨らませたり、ネジ曲がった暴論を吐いたりするわけで。にょほほほほ。

下山天監督の『弟切草』。

カンヌ国際映画祭のマーケット試写で、オダギリジョーさんが主演する忍者映画『忍 SHINOBI』のダイジェスト版が流されたそうで。
どうやら世界各国で配給されそうですけど、まあ配給希望の国が多ければ面白いとは限らないわけで。
例えばオダギリさんが悪役で出演した『あずみ』だって、世界数十カ国で公開とか言われてましたからね。

この『忍 SHINOBI』、監督は下山天氏。
『弟切草』『マッスル ヒート』を撮った人です。
だから、期待しない方がいいだろうと個人的には思っているわけで。
ってなわけで、今回は『弟切草』を御紹介。

菊島奈美は、ゲームソフト会社でアルバイトをしています。
その会社は松平公平が社長を務めており、浮田真一や小関透子が社員として働いています。
奈美は公平と付き合っていたが、最近になって別れていました。

奈美は実の父親の存在を最近まで知らなかったのですが、弁護士から遺産を継いでほしいと言われていました。
彼女は公平と共に、父の残した屋敷、弟切草が咲く山奥に建てられた洋館を訪れます。
そこで2人は、奈美の父が残酷絵画で世界的に有名な画家・階沢蒼一であったこと、奈美には直美という双子の妹がいたことを知ります。

奈美と公平は、直美だと思われる少女の死体を発見しました。
屋敷から去ろうとする2人ですが、急な嵐のために泊まらざるを得なくなってしまいます。
2人は、蒼一が6人の子供を殺してモデルにしていたことを知ります。
やがて奈美と公平の前に、直美が姿を見せるのです。

人気ゲームソフトを映画化した作品です。
この映画、フィルムではなくデジタルビデオで撮影されているのですが、映像に広がりや奥行きがありません。
だから、画面の隅や、あるいは画面の外に「何かがあるのでは?」「誰かがいるのでは?」という恐怖を得ることが難しくなっています。
また、洋館が映し出された時に、それがあまりにチープで何の怖さも無いというのもツラいところ。
屋敷の中に入っても、それが本物の洋館ではなくセットのようにしか見えません。
ようするに、隅から隅まで、あらゆる所に作り物の感覚があるのですよ。

手持ちカメラの映像を使ったり、監視カメラによる固定された映像を使ったり、早送りや巻き戻しをしてみたり、色々と凝っているようです。
しかし、そういうものは、たまに挿入されれば効果もあるでしょうが、そればかりだと映像が人工的になりすぎて臨場感が無くなるのです。
観客が登場人物に同化して、そこにある恐怖を感じることが出来なくなるのですよ。

始まって30分ほどが経過した頃、ようやく手持ちカメラの映像からは解放されます。
しかし、相変わらず映像のタッチは、それが絵空事であることを強調します。
だから奈美も公平も、まるでゲームの映像の中で実写のキャラクターが動いているように見えてしまいます。

たぶんゲーム的な映像というのは、ある程度は意識しているのでしょう。
しかし、ゲームであれば、人物がどこにいるのかは分かりやすいはず。
この映画ではマップまで登場するのに、奈美と公平が今どこにいて、どう動いているのかが分かりにくいんです。
今そこで何が起きているのかさえ、良く分からない場面まである始末。

奈美と公平は外部と連絡が取るのですが、それによって謎解きを始める意味が分かりません。
得体の知れないモノが持つ恐怖を、得体の知れるモノにして消してどうするのかと。
それに、外部と連絡が取れない方が閉じ込められた恐怖もあるはずですし。
さらにはショッカー描写まで和らげ、残酷描写を薄めているので、どこにも怖さは無いという状態に。

ドンデン返しってのは決まればカッコイイですが、外すと目も当てられなくなってしまう場合があります。
この映画は、ドンデン返しっぽい展開を幾つも用意していますが、それが全て不発に終わっています。
数が多いだけに、悲惨な状態に陥ってます。

例えば、「直美が実は男でした」というのは“意外な展開”になるんでしょう。
しかし、「だからどうした?」という感想しか浮かばないんですよ。
彼女が男だったことで、どこにどのような影響が出るのか、何が怖いのか、それがサッパリ分かりません。
例えば、直美が男だったという事実が明らかになった時に、「男だからアノ時のアレはあのようになっていたのか」という衝撃に繋がらないわけで。
そこで明らかになるのは、あくまでも「彼女は男だった」という事実だけで、恐怖が広がらないのです。
意外な展開の全ては、その場だけのコケ脅し。
というか、コケ脅しとしても成立していなかったり。

2通りのエンディングは、ゲームにあったマルチエンディングを持ち込んだつもりなのでしょうが、チープな夢オチを2回続けて見せられたような印象しか受けません。
この映画、結局はゲームの中で終わっているという構成になっているんですが、これは大きな失敗でしょう。
ドンデン返しまでもが、ゲームの中の出来事なのですよ。
1度目のオチは、それでいいでしょう。
しかし、2度目のオチは、「ゲームの中の出来事だったはずが、現実の世界に侵食してきた」という衝撃にならないと、恐怖に繋がらないでしょ。
終盤、奈美がゲーム画面を見ながら「アタシのエンディングは」と言った時点で、そこから描かれる物語がゲームの出来事だということが分かります。
で、ゲームの中で何が起きようとも、既に臨場感を放棄しているので、恐怖を味わうことは無理。

この映画は最後、「ゲームの中で異変が起きました」という所で終わっています。
しかし、それは大きな恐怖ではありません。
小さな不安です。
「こんなの作ってない」と奈美が怯えて言葉を発し、そこから現実の恐怖劇は始まるはずなのです。
つまり、これから本格的なホラー映画が始まるという、きっかけの段階で映画は終わっているわけです。
まあ、そういう映画なのです。

では、死ななかったら、また会いましょう。

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